先日、写真家/山谷佑介氏の処女作である「Tsugi no yoru e」展が原宿のBOOKMARCで開催されていたので感想などを書いていく。
Tsugi no yoru e」展
会期:2021年8月27日(金)〜 9月8日(水)12:00 〜 19:30
場所:BOOKMARC(ブックマーク)東京都渋谷区神宮前4-26-14
10数枚の額装された写真が目線の高さで一列に展示。
かつてパンクバンドの活動に力を注いでいた背景がある山谷佑介氏による作品。
展示されている写真は、処女作である「Tsugi no yoru e」からセレクトされたもの。
この作品について本人が述べている一節を抜粋する。
「新たに出来た友人たちと朝まで遊んでいたけれど、心の底から満足するような夜は一日もなく、いつも何か満たされないもどかしさを感じていた。短絡的に、ずっと何かと出会えることを期待していた。でも別にそんなものは現れなかった。」
毎日毎日、そのどこか満たされない気持ちをもってカメラを構えていたのだろう。
そしてどこか冷静である。
写真家は世界をモノクロで観ている人と、カラーで世界を観ている2通りのタイプがあると思う。
モノクロは事象でありカラーは想像。
モノクロは、現実よりもその出来事を浮かび上がらせる。
カラーは、現実よりも想像を浮かび上がらせる。
では山谷氏はどちらのタイプの写真家なのか。
私はカラータイプの写真家でないかと思っている。
でも作品としてのアウトプットはモノクロ。
これはなぜなのか。
それを山谷氏のこんな言葉から考えてみる。
「写真には場所を超えた何かを見つけたいと思っているし、時間を超えた強度のあるものに惹かれる。」
コンセプチュアルな他の作品も多数あるが、最後は事象。
もしかすると山谷氏の考える時間を超える写真の強度はそこに存在しているのかもしれない。
処女作にて自分の中における結論を、モノクロ写真を通して世に提示したのではないだろうか。
そう考え写真を観てると、少し腑に落ちる気がした。
「Tsugi no yoru e」写真集
244×178mm | 64ページ | Craft cover
発行:Gallery Yamatani 2021, House edition
装丁:CRAFSORT
印刷:inuuniq
¥7,700(税込)

2013年に限定150部で自費出版した最初の写真集「Tsugi no yoru e」の再販。
発行部数の明記はなく不明だが、予約受付は2021年9月20日(月)までとのことなので受注があるだけ刷る予定なのかもしれない。



写真には流行というものが少なからずあって、被写体に何を選ぶのか、人なのか景色なのか、どんなカメラで撮るのか、コンセプトはと言った具合に。
山谷氏が当時、どんな写真家に興味を持ちどんな被写体に興味があって社会や自身の生活はどのようなものだったたのだろうかと考えるのもまた一つ写真集を読む楽しみ方だと思う。
そして写真集の形態もソフトカバーからハードカバー、zineなど様々存在する。
写真集「Tsugi no yoru e」は、布生地が継ぎ接ぎされたパッチワーク調の装丁。
これもおそらく元パンクバンド出身という背景が関係しているように思う。
パンクバンドのバンドマンが着ているジャケットのように、ボロボロになるまで読んで次の世代に渡っていくことを想像するとなんだかいいなあと思った。
ひとり言
写真ブームはおよそ10年おきに山と谷が繰り返されているように思う。
そして今は谷の時代かと。
前回は2010年〜2015年ぐらいが山の部分だったので、2020年〜2025年は谷。
さて次の世代の写真家はどんな作品で世に問いかけるのか楽しみである。